2017/07/19

ねずさんが語る百人一首の世界



蓮の花が開く時期となりました。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
二十四節気では「小暑」。気温がずいぶんと上がっており、熱中症が心配です。水分の摂取や室温の調整にお気をつけくださいね。(書き出した日は七十二侯で「蓮始開」だったのですが、本日は「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」になってしまいました^^;)

こんなに暑いというのに、北極の氷は溶けるどころかさらに増えているそうです。おかげで調査船が進めず、調査が中断されたとか。地球温暖化といいますが、日本だけではなく、世界的な規模で観察する必要がありますね。


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先日、可愛がっていただいているある年配の経営者の方が主催する勉強会に参加させていただきました。毎回、さまざまな分野で活躍されている講師をお招きするのですが、今回はブログ『大和心を騙るねずさんのひとりごと』を運営される人気作家、ねずさんこと小名木善行さんの講演です。

今回の講演テーマは「百人一首に学ぶ日本人の誇り」でした! 小名木さんはこんな本も書かれています。『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首 千年の時を超えて明かされる真実』です。


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このご著書、ずいぶん分厚くて、金額も3千円を超えるのですが、なんとAmazonでベストセラーになっているそうです。直訳すると「?」でいっぱいになる謎の内容の百人一首を、当時の日本人の感覚や時代背景、そしてその和歌を作った状況や必要性から読み解いていきます。推理小説のような内容でわくわくします。このねず説の百人一首解釈をするキャラクターが、最近マンガの「ちはやふる」や「コナン」にも出てきているらしいですよ。



肝心の講演内容ですが、このご著書にも書かれているとおり、百人一首とは何なのか、ということをお話してくださいました。みなさま、百人一首に親しまれたご経験のある方も多いかと思いますが、どのように習われましたか?

ねずさんによると、百人一首とは第1番歌の天智天皇の時代から、第100番歌順徳院(順徳天皇)までの500年間の「抒情詩」である、とのことです。抒情詩とは何か。ウィキペディアにはこのように書かれていました。


抒情詩(じょじょうし)は、詩歌分類の一種。詩人個人の主観的な感情思想を表現し、自らの内面的な世界を読者に伝える詩をいう。叙情詩とも言うが、「汲み出す」の意味から「表現する」を表すようになった漢字「抒」を使うのが本来的である。叙事詩劇詩とともに詩の三大区分の一つである。

抒情には、直接内面を表現するもの、風景に寄せて内面を表現するもの、事物に託して内心を表現するもの、歴史的事件や人物に寄せて内面を表現するものなどさまざまな方法がある。



古くはホメロスの作品『イーリアス』や『オデュッセイア』など、超長編の歴史的な作品を指して言います。


百人一首は、和歌の意味を探ることにより、編者の藤原定家の意図を読み解くことに面白味があるそうです。1首1首を直訳するだけでは、確かに「つまらない…」ですよね。私は女流歌人の和歌が好きで、子供の頃にいくつか自然と覚えていたのですが、大抵の解説本にある意味を読んでも、そんなくだらない内容だったのか、とがっかりしたものです。ところがこれは表の意味。和歌の神髄は裏の意味を読み解くことにあり、その心を「察する」訓練が和歌を詠むということなのです。

ねずさんによると、平安貴族は和歌ばかり詠んで恋にうつつを抜かした情けない人たちというイメージが定着しているようですが、実は和歌による人心をつかむ訓練をし、何か事件や事故が起こる前に人民を助けるような政治を行い、女性の活躍や文化の花開く平和な時代を築いた人たちとのこと。

聖徳太子の十七条の憲法の第十一条に「明察功過」とあります。これは「功績も過ちも、先に明らかに察しなさい。そして賞罰は察して事前にしてあげなさい」という意味になるそうです。こうした世の中を築くため、天智天皇(中大兄皇子)は「大化の改新」を行いました。百人一首は、天智天皇を始め多くの為政者が平和な時代を築くために努力してきた時代、そして文化の花開き女性が輝いた時代、それが徐々に衰退していく時代、の3つの時代の栄枯盛衰を百首の和歌で表現しているとのことです。壮大なお話ですね。



ところで、肝心の百首の内容ですが、すべて書くわけにはいかないので、解説はぜひご著書をお読みいただきたいです。ねずさんが直接ご解説いただいた数首について書かせていただきますね。


一番歌 天智天皇
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ 我が衣手は 露に濡れつつ

「かりほ」とは、農作業のための仮小屋「仮庵」と稲刈りで刈った「刈穂」の掛詞。
「苫(とま)」とは、ワラやススキをゴザのように編んで、屋根を葺くのにもちいたもの。
「衣手」は、「袖」の意。

直訳すると、秋の田んぼの脇にある仮小屋の、屋根を葺いた苫の目が粗いので、私の衣の袖は露に濡れてしまったよ、となります。これではなんだか愚痴っぽい歌ですよね^^;

実はこれ、天皇自ら働かれているという象徴的なお歌(御製:ぎょせい、天皇の詠んだ和歌)なのです。秋の稲刈りが終わり、刈り取った稲の藁を干し、露の降りる頃、粗末な小屋で藁を編みます。現代の天皇陛下も農作業をされますが、これはここ最近のお話ではなく、千年も二千年も続く伝統なのです。

諸外国の王族の歴史を考えてみますと、民は隷属するものであり、権力者に奉仕し、富は王侯貴族にすべて奪い取られます。しかし、日本の天皇家は、民と共に働き、民が豊かに暮らせるよう心を配り、何事も悪いことが起こる前に察して食い止めることを美徳として存在してきました。これを「シラス統治」と言います。


シラス統治とは

『古事記』にこんな記載があります。
「汝がうしはける、この葦原中国(あしはらのなかつくに)は、我が御子のしらす国ぞ」
これは、天照大神の孫であるニニギノミコトが天孫降臨されて、地上を治めていた大国主に(天照大神の神勅として)言った言葉です。実は、それまでの日本は「ウシハク統治」といって、力で抑えつけて治める世の中でした。その権力者が出雲の大国主です。ですが、天の国の平和で幸せな世を、地上にも広げたいという天照大神のご意向で、ニニギノミコトはこれから「シラス統治」を行っていくから国を譲りなさいと説得します。大国主もこれに応じ、「国譲り」が成ったのです。

ウシハク統治とは、権力者が直接民を支配し、隷属させるものです。利益は権力者に集中します。

しかし、シラス統治とは、天皇の親任を得た権力者が統治する方法です。これは、民も国土もすべて天皇の宝物(おおみたから)であり、大切に扱って統治してくださいね、というやり方です。これが日本の伝統的な国の在り方でした。


また、二番歌である持統天皇の御製も同様です。

春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香具山

訳:春が過ぎて夏が来た。純白の衣を干そう、天の香具山に。

なんと天皇自ら洗濯をしている様子を歌っておられます。持統天皇は天武天皇の皇后で、天武天皇が亡くなったあと天皇に即位された女性天皇です。ねずさんによれば、1番2番の歌で、天皇が働いている歌が収録されているのは、日本と言う国がそういう国柄であることを強く物語っているものであると言います。

ところが、東大をはじめとする学者の先生方は、この歌を解釈するのに山まで登って洗濯を干しにいった歌だとか、山で洗濯をしていた歌だとか、どうしたら和歌の品性をおとしめるような解釈ばかりできるのだろうというご解説をなさっているそうです。当時、宮中に洗濯用の川が引かれており、宮中で洗濯はもちろんできたそうですし、わざわざ干すのに山に行く必要などないことは、主婦のみなさまならよくおわかりでしょう。

ねずさんは、洗濯を干す傍らから見える香具山に、亡くなった旦那様を思い浮かべて決意を新たにする持統天皇の心を語ってくださいました。女性が天皇になるということは、問題なく天皇を継承する世継ぎがいない非常事態です。きっと持統天皇は心折れそうになりながらも、強く保って頑張っておられたことでしょう。


そして、三番歌です。
ここまで天皇おふたりの御製でした。普通に考えれば皇后や大臣クラスのお方のお歌になると考えるのが普通ですが、なんと下級貴族の歌が来ます。

三番歌 柿本人麻呂

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

訳:足を引きずって歩くほどの山奥に棲む山鳥の尾のように、長い夜を、ひとり寝ることになるのだろうか。

これですが、通常恋の歌ととらえる方が多いそうです。確かに夜ひとりで寝ることを寂しがっているように感じますね。ですがねずさんはそんな高尚でない歌が三番歌に来るでしょうかと問われます。柿本人麻呂は下級貴族ですが、一流の歌人です。夜ひとりで思い悩むことといったら和歌についてではないでしょうか。それほどその時代の貴族は言葉ひとつひとつを大切にし、五七五七七の短い文章で深い深い意味を盛り込む工夫を重ねていました。また、天皇のお歌のあとに、下級貴族で一流の歌人の歌が続けられることで、身分よりも心を大切にしてきた日本の在り方をあらわしているとのことです。



このように、戦前の教育が全否定されている戦後教育では教えられていない世界がまだまだたくさんあります。ぜひ大和撫子塾でもそれらを語り継いでいける人材を発掘していきたいと考えております。

小名木先生、素敵なご講義をありがとうございました。年内には岐阜にお呼びしたいと考えておりますので、ご興味のある方は、男性女性に関わらず、ぜひご連絡をいただけたらと思います!



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